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高圧合成法による新規機能性酸化物の開拓

図1: 高圧合成装置(500tonプレス)

 一つの化合物に対する常温・常圧での安定相は1種類ですが、圧力下における高密度状態が凍結されると多種類の構造が導かれます。当研究室では、高圧合成法(P>10 GPa, T>1000 ℃)による酸化物準安定相の開拓に取り組んでおり(図1)、(I)室温で強磁性と強誘電性が共存する鉄酸化物(ScFeO3, InFeO3)や(Ⅱ)ラットリング現象を示す四重ペロブスカイト酸化物(CuCu3V4O12)など、学術的に価値の高い新物質を多数合成することに成功しています(図2)。

  (I)は低消費電力・高記録密度・不揮発性の次世代メモリデバイス実現のための鍵となる物質群(マルチフェロイック物質)であり、(Ⅱ)は非常に珍しい配位構造(3d遷移元素に対する酸素12配位正二十面体)を有しており、新しい熱電変換材料となり得る物質群です。このような特異な配位構造の実現と機能性の開拓に挑戦しています。

図2:(左) ScFeO3の結晶構造。この化合物は、3価のカチオンがAサイトとBサイトを占有した珍しいLiNbO3型構造をとる。これらのカチオンの大きな静電反発により大きな自発分極が生じる。(右) CuCu3V4O12の結晶構造。Cu2+は酸素12配位正二十面体の広い空間中で大きな振幅を伴う原子振動(ラットリング運動)を行っている。